『文藝春秋』6月号が橋下徹特集を組んでいる。
その中からいくつか、目についた文章を紹介しよう。
まず冒頭の藤吉雅春氏「人物研究 橋下徹が『総理』になる日」から。
この一文、タイトルとは裏腹に橋下氏への辛口人物評だ。
興味深いエピソードが多く披露されている中に、こんな一節がある。
「今年2月、大阪のホテルで行われた大阪維新の会所属市議の祝賀パーティーで…中山(泰秀元衆議院議員)は…
隣に座る橋下の肩にポンと手を置いた。
『墓参りには行ったのかい』
『誰のですか?』
『(橋下氏の)人生の最初の(選挙で団体として)推薦状を出した人だよ』『どちらの団体でしたっけ?』
『覚えてないの?不義理だねー』
(橋下氏が府知事選挙に挑んだ時、橋下氏は中山氏に選挙に有利な材料として、
全国規模の団体から推薦状をもらいたいと依頼。
中山氏は、板金関係の工業団体から推薦状を取ってやった。
推薦状の授与式で橋下氏は大喜び。
「人生で初めての推薦状です。勝ったら挨拶に行きます」と言っていた)
…しかし、選挙応援をしてくれたその団体の会長に挨拶に行くことはなく、会長は3年後に亡くなった 」
橋下徹という人物を象徴するような逸話ではないか。
しかし、「勝ったら挨拶に行きます」という言い方からして、普通の感覚ではない。
勝っても負けても、応援してくれた人や団体には「挨拶」というより、お礼に行くのが、世間の常識だろう。
次に「『平成維新』12人の公開質問状」から。
まず、先般、刊行した『古事記が日本を強くする』(徳間書店)の共著者、中西輝政氏の文章に、以下のような指摘がある。
「2月、名古屋の河村たかし市長が『いわゆる南京大虐殺はなかったのではないか』と発言したことに対し、橋下氏は大略、
次のようにコメントしたと報じられた。
『歴史的な事実について発言する時は、外交関係も踏まえて発言しなければいけない。
南京事件について言ったところで現実的なプラスを感じない』と。これは意外な発言だった。
…問題は自国の歴史に対する余りに軽い、余りに『現実主義的』な、冷笑の響きさえ感じさせることだ」
次に中野剛氏。
「橋下徹大阪市長に対する質問状など出すだけ無駄である。なぜなら、彼は政治家になる直前、
自著『まっとう勝負!』でこう述べているからだ。
『政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲 の最高峰だよ。
自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ。
…ウソをつけない奴は弁護士になれないよ!ウソつきは政治家と弁護士の始まりなのっ!』
ウソつきの見解など、聞いたところで仕方なかろう」
まだ政治家になる前だったせいか、橋下氏、何と「正直」な発言か。
佐藤優氏「首相公選制を実施すると、首相に権力のみならず国民から直接選ばれた権威が付与され、天皇陛下の地位が変化し、
国体を毀損する危険性があるとの批判に対する反論をお聞かせください」
最後は、御厨貴・福田和也・湯浅誠3氏の座談会「平成『世直し一揆』は成功するか」中の発言を取り上げる。
湯浅氏「橋下さんは都市間競争に参入し、カジノも作って生き残るんだ、と言っていますが、それを本当に推し進めたら、
八割九割の人々は切り捨てられる側に立たされざるを得ないでしょうね」
福田氏「私は右寄りの人間ですが、コンプライアンスの観点から『君が代』を斉唱しない職員は処分する、と言われると、
どうしても違和感が残るんですね。
…歌うからには、やっぱり皇室を尊奉し、国を愛する気持ちで歌ってほしい」
一方で「 君が代」重視の姿勢を打ち出しながら、
もう一方では首相公選制の導入を掲げるというのも、自家撞着ではないのか。
御厨氏「政局的には、まさに国政に打って出ること自体が、橋下さんの『躓きの石』になる可能性が高いですね。
仮に数十議席を獲得したとしても、政権に加わるためには、既存政党との妥協をしなければならない。
となれば、これまでの支持者からは『橋下も妥協するのか』という批判を受けるでしょう。
逆に、あくまで野党にとどまれば『結局、何も変わらないではないか』という不満が募る」
同誌から、目に止まった発言を、ざっと拾ってみた。
これらに対し、橋下氏はまた、お得意のツィッターで罵倒するのだろうか。
ツィッターが「馬鹿発見器」と呼ばれているとも知らないで。
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